CHAPTER 01

原点 ── フレームワークを「振り回した」失敗

外資系企業でマーケティングを学び、さらにグロービスで MBA を取得した。順風満帆に見えるキャリアの裏に、木下さんは正直にある失敗を明かす。

フレームワークを振り回してた、っていったところはあります。

グロービスでさまざまなフレームワークを学び、使ってみたかった。型を覚えた直後、社長へのプレゼンにそのまま持ち込んだ。結果は──ボロボロだった。

現場とはちょっと違うぞ、と。アカデミックなラインですね。

フレームワークはあくまで「型」であって、それを現場に当てはめれば答えが出るものではない。学ぶと使えるは、別の話だ。

この経験が、木下さんの出発点になった。マーケティングとは何かを自問自答し続けた 13 年間。課題を整理し、構造を見て、戦略をつくる──今日の木下さんを形づくった原型は、この「ダメ出し」の瞬間にある。

CHAPTER 02

「PR」と「広告」は、別物だった

PR とは何か。木下さんは丁寧に整理する。

一般的には広報といったところで知られています。

厳密にはパブリックリレーションズ(Public Relations)。事業活動や思い、ストーリーを伝えることで、信用・信頼を得ていくことだ。

広告との違いは明確である。広告は「自らの発信」によって認知を取りにいく。PR は「第三者の評価」によって信頼やブランディングを積み上げる。

広告は基本的には自らの発信といったところです。一方 PR は第三者の評価といったところがやっぱり大きくあります。

この区別が、多くの経営者には曖昧なまま残っている。「とりあえず SNS」「とりあえず広告」──木下さんが現場で繰り返し見てきた失敗のパターンは、この混同から始まる。

PR とマーケティングは重なる部分があり、両方が必要だ。しかし多くの企業では、それぞれ別のコンサルタントに依頼し、考え方が食い違い、一貫した流れが生まれない。露出・信頼・売上を一貫して成立させる──木下さんが二つを同時に担う理由は、ここにある。

CHAPTER 03

廃業寸前の会社が、知事と対談するまで

ベンチャー支援団体でのある経験が、木下さんの確信を決定づけた。

介護関連の事業者だった。良いことをしているのに、社会に伝わらない。売上も上がらない。木下さんは課題を整理し、PR 戦略を立て、実行した。

いろんな新聞に掲載されたり、ラジオに出たり、テレビに出たり。世の中にいい活動をしていることが、どんどん広まっていった。

その結果、地域の公共機関とのコラボレーションが始まった。大手企業との取引が生まれた。そして──自治体の知事との対談まで実現した。

数人の会社だったんですけど、それがどんどんスタッフさんも増えていって、10 人近くのスタッフが増えていった。

廃業寸前から、スタッフが 10 人近く増える会社へ。変わったのは商品でも事業モデルでもなかった。伝え方の構造だった。

CHAPTER 04

なぜ伝わらないのか、の「前段」

木下さんのコンサルティングで最初に行うのは、課題の整理だ。

一部のよくあるコンサルタントに依頼して失敗してしまうケースは、施策に行ってしまうんです。

SNS が流行っているから SNS を頼む。広告の時代だから広告を打つ。理由が「流行っているから」では、戦略がない。

まずやってみることが正解だみたいなとこも、やっぱり一部の会社では出てくるんですけど、でもやってみて修正する仕組みを作らないとあんまり意味がないんですよね。

「まずやろう」は正しい姿勢だ。しかし、やった後に何を評価して、どう修正するかが決まっていなければ、試した意味がない。

整理すべきは、意見より先に事実だ。

ヒアリングするとこう思うとか、お考えを聞くことはあるんです。でもその前に大事なことは、やっぱり今現状事実としてどんなことがあるかということです。

ファクトを集め、意見と事実を分けて整理する。課題が明確になれば、戦略は自ずと定まる。課題の整理ができたら半分成功──木下さんはそう言い切る。

CHAPTER 05

コンサルタントの、コンサルタント

木下さんが現在、最も力を入れている領域がある。コンサルタントや講師、専門家を対象とした PR 戦略の支援だ。

経営コンサル、人事コンサル、IT コンサル、財務コンサル──それぞれの分野では圧倒的な専門性を持つ。しかし、PR 戦略となると話は別だ。

その分野もちろん強い方なんですけど、では PR 戦略が強いかといったらやっぱり PR 戦略が別物になってまして。

自分を売り込もうとしても、何をどう発信すべきか分からない。世の中にはプレスリリースの書き方の本も、中小企業向けの PR 本もある。しかしコンサルタント個人のブランディングに特化した方法は、これまでほとんど存在しなかった。

本もセミナーもこれまでずっとなかったんです。

だからこそ、木下さんはそこにフォーカスした。その集大成が、著書『コンサルタント・講師のための PR 戦略』(同友館)である。そのコンセプトの面白さを出版社も評価し、本の形になった。

コンサルタントのコンサルタント──型破りに見えて、必然のニッチだった。

CHAPTER 06

AI 時代に、本質が問われる

AI の台頭を、木下さんはどう見ているか。

さまざまな施策レベルの情報が、どんどん溢れていってるという状況になってます。

SNS の画像も、ブログの文章も、プレスリリースも、AI があっという間に生成できる。施策レベルのアクションは、急速に大量化・自動化されていく。

しかし、その流れを逆に読めば何が見えるか。

逆に重要になるのが、やはり本質であったり戦略であったり、どういった価値を提供できるか。

表面の施策ではなく、奥にある本当の価値・本当の本質が、AI 時代にこそ差別化の軸になる。やり方ではなく、あり方。存在そのものの意味が問われる時代だ。

むしろ企業でいうとやり方、戦略とかやり方ではなくて、あり方、その存在のあり方っていったものが、ますます大事になっていると。

そして、そのあり方を自分で見つけることは難しい。優秀なコンサルタントでも、自分を外から見ることは苦手だ。木下さんが寄り添うのは、まさにその「自己発見の支援」である。

CHAPTER 07

ユアウィル ── あなたの志を、社会へ

社名の由来を問われると、木下さんは少し照れながら説明する。

ユアウィル──Your Will──あなたの志、っていう意味で私はこの社名をつけました。

ウィルは「意思」とも訳せる。しかし木下さんが込めたのは、もっと公に向いた言葉──「志」だ。

夢を持って一生懸命に取り組む人がすごい好きなんですね。そういったかたを見るとですね、やっぱりずっと昔から心が動かされてきた。

良いものを持っている。良い事業をしている。けれど、伝わらない。売れない。その理由は、商品の質ではなく、伝え方の構造にある。

その構造を整えることで、思いが社会に届く。届いた思いは、信頼になり、売上になり、採用になり、次の挑戦の資本になる。

PR やマーケティングという仕事をしています。企業や専門家の方の魅力を整理して社会に伝えていくことで、事業の可能性を広げていく。

木下さんが目指すのは、自分が PR の専門家として輝くことではない。一生懸命に挑戦する人の事業が、きちんと社会に届く仕組みを作ること──それが、ユアウィルの存在理由である。

VOICES

名言

フレームワークを振り回してた、っていったところはあります。
広告は自らの発信。PR は第三者の評価。
課題の整理ができたら、半分成功している。
あり方、その存在のあり方っていったものが、ますます大事になっていると。

VOICE BEHIND THE VOICE

木下さんの原音

対話の中で、ふと口にした言葉。
編集部が聴き取った、その人の核にある原音。

「振り回した」という、正直さ

フレームワークはあくまで型だけなんですけど、学びたてで使ってみたいっていうこともあって、それをもって社長にプレゼンしたらボロボロに言われまして。

──MBA を取得し、マーケティングを学んだ木下さんが最初に明かしたのは、成功体験ではなかった。「型を振り回した失敗」だった。これはただの謙遜ではない。フレームワークと現場の間にある埋めるべき距離に、13 年間向き合い続けた人間の、原点の告白である。この失敗があったからこそ、「課題を整理してから戦略を立てる」という木下さんのコンサルティングの核が生まれた。

施策より先に、構造を見る

企業側もとりあえず目についた施策を依頼してしまうってことはもちろんあります。とりあえず SNS だとか言いそうですよね。

──「とりあえず SNS」「とりあえず広告」。これは社長たちの怠慢ではなく、構造が見えていないための自然な反応だ。木下さんが提供するのは、SNS をうまくやる技術ではなく、その前の段階──なぜ伝わらないのか、なぜ売れないのかを構造から整理する力である。伝わらないと売れないは、根っこで同じ問題を抱えている。施策の手前に戦略を、戦略の手前に課題の整理を置く。この順番こそが、木下さんの流儀である。

AI 時代に「あり方」が問われる

表面の施策のアクションレベルではなくて、その奥にある本当に大事な価値であったり本当に大事な本質っていったものが、より重要になってくる。

──AI が大量の施策を自動生成できる時代に、施策で差別化することは難しくなる。逆説的だが、AI が発達するほど、人間にしか語れない本質・志・あり方が、唯一の差別化軸になる。木下さんがコンサルタントのコンサルタントとして行っていることは、まさにこの「あり方の言語化」である。AI 時代の PR は、うまい文章をつくることではなく、本物の価値を正確に言葉にすることだ。

CLOSING

明日への誓い

私が力になりたいと思っているのは、夢を持って一生懸命に取り組んでいる方々です。

世の中には自分のやりたいことや思いを形にしようと、本気で挑戦している人がたくさんいます。うまくいくことばかりではなく、悩んだり迷ったりしながらも、それでも前に進もうとしている。私はそういった人を見ると、心から応援したいと思うんです。そして、そういう人がきちんと報われる社会になってほしい、そういうふうに願っています。

私が直接力になれるのは、事業という形の夢だと思っています。思いのこもった事業を成功させること、その実現に尽力することが私の役割だと感じています。そのために PR やマーケティングという仕事をしています。企業や専門家の方の魅力を整理して社会に伝えていくことで、事業の可能性を広げていく。

今はその手段として PR やマーケティングの仕事をしていますが、たとえ時代の流れで事業が変わったとしても、その思いは変わりません。

これからも思いを持って挑戦している人の事業が社会に届くよう、全力でサポートを続けていきたいと思っています。